身近に潜む危険物について

工場やガソリンスタンドなどで取り扱うもの以外にも実は多くの危険物が身近な生活の中で使用されています。

一例を挙げると,自動車の燃料となるガソリン軽油,そして,ストーブなどの暖房器具の燃料として使用される灯油があります。その他にも,近年感染症予防対策で多く使われる消毒用アルコールや化粧品,制汗スプレーの中にも消防法の危険物として規制を受けるものがあります。毎日のように使用する油類の中にも危険物が潜んでいます。動植物から抽出できる油類で引火点が250℃未満のものは第四類危険物に指定されています。食用のサラダ油などは引火点が250℃以上あるのですが,オリーブ油やナタネ油などは250℃未満で,危険物に指定されているものもあります。

かなえちゃん

危険物は,発火や引火しやすい等の性質をもっており,火災危険が非常に高いものです。危険物が関連する火災や危険物が流出する事故が発生すると周囲に大きな被害を与えるだけでなく,自然環境にも大きな影響を与えるおそれがあるため,取扱いには注意が必要です。

近年使用する機会が多くなった消毒用アルコールなどの危険物から発生する蒸気は,火気により引火しやすく,また,空気より重く低所に滞留しやすい特性があります。火気を避けた場所で使用するなど,必ず製品の取扱い時の注意事項を守り,安全な方法で取り扱いましょう。

危険物に該当する可能性のあるもの

危険物に該当する身近なものは下記のとおりです。

消毒用アルコール
ヘアスプレー
灯油
ガソリン
マニキュア
接着剤

※他にもペンキなどの塗料やバーベキューで使うゼリー状の着火剤などが危険物に該当する可能性があります。

身近にある危険物の事故事例

事例1

石油ストーブの火を消さないまま燃料タンクに灯油を補給したところ,こぼれた灯油に石油ストーブの火が引火し,火災になった

  • 石油ストーブに燃料を補給する時は必ずストーブの火を消し、周囲の火気についても十分確認しましょう。また、燃料タンクのキャップは確実に閉めましょう。

事例2

バーベキューこんろの炭火の火力が弱くなってきたため,ゼリー状の着火剤を注ぎ足したところ,着火剤の一部が火のついた状態で飛散し,こんろの近くにいた子どもが火傷を負った

  • ゼリー状の着火剤はメチルアルコールが主成分のものが多く,蒸発しやすく引火しやすいので,使用する時は使用方法をよく確認し,燃えているものへの注ぎ足しは絶対にしないようにしましょう。

事例3

マニキュア除光液で爪の手入れをしていた途中で,たばこを吸おうとライターで火をつけたところ,除光液の可燃性蒸気に引火し,火傷を負った

  • マニキュアや除光液に含まれる酢酸エチルやトルエ ン,アセトンは、第4類危険物の第1石油類に分類され,引火点が21℃未満と低いため,室内で除光液を使用する場合には換気を十分に行うとともに,周囲の火気には十分気をつけましょう。

危険物を安全に使用するポイント

私たちの生活に欠かせない物品の中には危険物に該当するものがあり,取扱い方法を誤ると,火災や思いがけない事故等を引き起こすおそれがあります。身近な危険物を安全に使用するポイントを幾つかご紹介します。

火気の近くで使用しない

消毒用アルコールなどは蒸発しやすく可燃性のため,使用する際,近くで紙巻タバコなどの喫煙やコンロを使用した調理などをしていると,それらが火源となって引火するおそれがあります。危険物となるものを使用する際は,ストーブなどの火源になりそうな火気の近くを避けましょう。

直射日光が当たる場所など高温になる場所に保管しない

危険物は,直射日光に熱せられるなど温度が高くなることで可燃性蒸気が発生します。保管場所は,直射日光が当たるなど室温が高くなるような場所を避けましょう。

風通しの良い場所で使用する

危険物を使用するとき,危険物から可燃性蒸気が発生するおそれがあります。この可燃性蒸気は空気より重く,低所に滞留しやすい性質があります。危険物を使用する場合は,風通しの良い場所で換気しながら行うなど,可燃性蒸気を滞留させないようにしましょう。

危険物は使い切る

1シーズンで使い切れなかった灯油は,次の冬まで保管して持ち越して使用する方もいるかと思います。持ち越し灯油は正しく保管されていないと劣化し,使用による事故も多く発生しています。保管状態が良くない場合には,本来無色透明に近い灯油が,黄色がかった色に変色したり,通常の灯油にはない臭みも出てくると言われています。危険物の長期保管は避け,なるべく使い切るようにしましょう。

正しい方法で廃棄する

廃棄の方法を誤ると火災が発生する危険があります。お住まいの自治体の分別排出ルールや指示に従い,専門の業者に依頼するなど正しい方法で廃棄しましょう。廃油であれば処分料がかかるかもしれませんが近くのガソリンスタンドに相談してみてください。スプレー缶の処分に関しては,缶の中にある全てのガスを抜いたうえで廃棄するようにしましょう。